ユズリベキモノ
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2011.12.23 Friday
『ゆずり葉』 河井酔茗 作
子供たちよ。
これはゆずり葉の木です。
このゆずり葉は
新しい葉が出来ると
入り代わって古い葉が落ちてしまうのです。
こんなに厚い葉
こんなに大きい葉でも
新しい葉が出来ると無造作に落ちる
新しい葉にいのちをゆずってー
子供たちよ
お前たちは何をほしがらないでも
すべてのものがお前たちにゆずられるのです
太陽のめぐるかぎり
ゆずられるものは絶えません。
かがやける大都会も
そっくりお前たちがゆずり受けるのです。
読みきれないほどの書物も
幸福なる子供たちよ
お前たちの手はまだ小さいけれどー。
世のお父さん,お母さんたちは
何一つ持ってゆかない。
みんなお前たちにゆずってゆくために
いのちあるもの,よいもの,美しいものを,
一生懸命に造っています。
今,お前たちは気が付かないけれど
ひとりでにいのちは延びる。
鳥のようにうたい,花のように笑っている間に
気が付いてきます。
そしたら子供たちよ。
もう一度ゆずり葉の木の下に立って
ゆずり葉を見るときが来るでしょう。
ボクタチ大人は子供たちに何を譲れたというのだろう。
どんなものを譲ろうとしているのだろう。
自分たちの享楽のためにだけあらゆるものを消費尽くし、
そしてそのことが価値があるともてはやされ、
挙句の果てに手を付けてはならないものにまで手を出し、
災いが降りかかる。
にも関わらず、まだ厚顔無恥ぶりを晒し続けるのだろうか。
「ゆずり葉」を読むと心が締め付けられる。
「いのちあるもの」を一生懸命に作ってきたんだろうか。
「うつくしい」ものは壊されていき
「ひとりでにいのち」は縮んでいるようにしか思えない。
嫌がっても全てのもが押し付けられる「おしつけ葉」だ…。
- 短歌&詩
- 11:16
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Posted by 門哉彗遥