どんな神であれ感謝する我が負けざる魂に

    2010.02.07 Sunday


歓声と応援歌のようなものが次第に大きくなっていく。ラグビーの練習風景が映し出される。綺麗に整備された芝生の上で白人たちがサンドバックにタックルをしている。カメラは移動し、道路をはさんだ反対側のグランドに向けられる。なんの整備もされていないただの広場で、身なりの貧しい黒人の子供たちがサッカーをしている。歓声が大きくなる。サッカーをしている子供たちは道路側に駆け寄る。ラグビーをしていた白人たちもフェンスに集まる。道路を車の集団が走っている。子供たちは「マンデラ!マンデラ!」を拳を振り上げ歓声を送る。マンデラが釈放されたその日だったのだ。

この場面だけで当時の南ア共和国の状況がよくわかり、この後の物語の始まりとして相応しいシーンだ。27年間も牢獄に囚われていたにも関わらず彼が行ったことは、相手を赦すという行為だ。長年アパルトヘイトによって苦しめられてきた黒人たちにも、その行為を促した。そしてラグビーというスポーツを通じて奇跡をマンデラは起こしたのだ。

マンデラの魂の高潔さに心を打たれながら、その心に呼応してひとつになっていく選手たち、観客、そして国民たち。伝播していくその熱と光が否応なく僕にも降り注いできたのだ。最後のラグビーの試合の場面では、体は熱くなり、腹の底より横隔膜を震えさせながら込み上げてくるものが確かにあった。これこそ歓喜だ。国がひとつとなった瞬間に立ち会えた喜びだ。

しかし、一度奇跡が起きたからといって、世の中はそんなに簡単に変るものではないと、今の南ア共和国の現状を見て悲しいかなそう思う。白人と黒人の経済格差は依然として大きく黒人の失業率は約40%と高い。また成人の五人に一人がエイズ感染者で、ヨハネスブルクは世界最悪の犯罪都市と言われている。アパルトヘイト時代に教育を受けることができなかった人たちがたくさんいることが一因とされているので、マンデラが望んだ虹の国となるのは、まだまだ時間がかかりそうだ。だからこそ、この映画は本当に価値のある映画だと思う。

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