青眉の人

    2010.10.11 Monday
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    十日、お芝居を観た。演劇集団よろずやの「青眉の人」だ。明治から昭和にかけて生きた上村松園という女性日本画家の一生を描いた作品である。場所は谷町四丁目にある山本能楽堂で、音楽や効果音はすべてギターや二胡、能管に小鼓などの生演奏。主演の竹田朋子さんは、mixiのマイミクでもあり、彼女が出演している作品を拝見したのは、これで三度目であった。

    結論から言うと、格調が高く、凛としたものを感じる本当に素晴らしい舞台だったと思う。竹田さんは上村松園の娘時代から七十四歳の最期までを、舞台に出ずっぱりでメイクも衣装も変えることなく演じきった。不思議なことに、竹田さんの体はだんだん小さくなっていき、髪の毛は黒いはずなのの白髪に見え、顔は皺だらけのように見えてくるのだ。

    舞台は、松園のアトリエ「棲霞軒」(松園の実家、葉茶屋「ちきり屋」の二階)となっていて、上手の切戸口が一階へ通じる出入り口、下手の橋掛かりは異界へ通じる道と設定されていた。その橋掛かりから、九十九神たちが現れ松園にちょっかいをかけたり、松園の絵のモデルたちである清少納言、楊貴妃や光源氏の恋人六条御息所やたちが「私を描いて」と現れ、松園と旧知の間柄のように交流していく。そして、その橋掛かりからは、次第に亡くなっていく松園の師匠や兄弟弟子たちが現れるように、やがて幼い松園を抱いた母親まで登場してくる。そんな異界の人たちとのコンタクトを通じて松園の内面まで描いた幻想的なお芝居でもあった。

    明治という時代に、女性の松園が絵を心おきなく没頭することができたのは、女手一つで育ててくれた母の支えがあったからで、母の愛が彼女の作品を生み出したと言われている。だから鬼籍に入った母親が登場するシーンは大きく心を揺さぶられるのだ。六十歳近くになった松園が、自分の年よりも遥かに若い母に「おかあさん」と身を寄せ、子供に戻りつつもやはり六十歳である松園を三十代の竹田さんが演じている。この複雑な交錯自体も凄いぞと感じた。

    松園は七十三歳で女性として初めての文化勲章をもらう。そしてその報告を娘夫婦たちから聞き終わったあと、そのままゆっくりと倒れこんでしまう。そこへ九十九神たちが、「しょーえん、あ・そ・ぼ」と橋掛かりから呼びかける。「もーいいかい?」と呼びかけると、「まーだだよ」と言って松園はついとたちあがる。一瞬で娘の松園に戻るのだ。僕は何故か鳥肌がたった。思わず山本能楽堂を天井を見上げた。きっとこの能楽堂に上村松園は来て、何処かで見ていると何の脈絡もなくそう思ったからだ。

    三十五年ほど前、僕は上村松園の画集を買ったことがある。年賀状に美人画を描こうと思ったからである。それからずっと上村松園のことは忘れていた。ああ、あの画集は何処にいったのだろう。




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