ザ・シェルター

    2011.03.21 Monday
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     北村想さんの戯曲「ザ・シェルター」を読んだ。


    シェルターのモニターとして一家四人(夫婦、子供、祖父)が庭に設置されたそれに数日間入ることになる。しかし、何故かコンピュータの故障で、電気系統が作動しないまま閉じ込められてしまい、貯水タンクも壊れ、水が無くなってしまう。家族は暗闇の中で、昔の台風の思い出を語り始める。


    「あのね。もし、もしですよ、ひょっとして核戦争があったとして、人々が今の私たちのようにシェルターに入って、核戦争の終わるのを待つとするでしょ。そうしたら、家族はいったいどんな話をするんでしょうね。やっぱり台風の話でしょうか。」


    やがて電気がつき、シェルターの扉が開けられる。うす紅色の光が差し込む。外は夕焼けだ。おじいちゃんと孫は赤とんぼを捕りに外に出て行く。


    「実験はお前たちだけでやればいいだろう。私はもういい。ミサイルが飛んで来れば、できるだけ当たらぬように気をつけるさ。」


    夕焼けがますます赤くなり、無数の赤とんぼが飛び始める。戯曲には書かれていないが、シェルターの中にいる間に、本当に核戦争が起きてしまった設定だと誰かから聞いたことがある。最後の夕日は核爆発の色なんだろうか。


    しかし、コンピュータが壊れてから、ラジオのニュースで台風情報が流れる場面がある。そこでは核戦争には一切触れられていないから、核戦争が勃発したという設定は無理があるような気がする。戯曲に書かれている最後の場面---


    サトコ あなた…
    センタ ああ、夕焼けだ。
        センタとサトコ、ちらっとそれぞれの表情を覗くが、苦笑して、出て行く。


    と書かれているが、もしこれが核爆発の夕日を見ているのなら、苦笑などせず呆然と眺めているはずである。かなり好意的に解釈しなかれば、核戦争の「暗示」にもなっていないような気がする。しかし、この作品のミソはそこではなく、暗闇のなかで交わす台風の思い出なんだろうと思う。いつか舞台があれば観たいものである。


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