大阪のロマン

    2011.03.26 Saturday
0

     
    -----------------------------------------
    また、これはイリュージョンだ。織田作の『可能性の文学』から、「可能性の演劇」とパロって称してもいいが、演劇というのは、すべてが「可能性」だから、そう、ことわる必要はナイ。戯曲も、演出も、役者も、照明、音響、その他スタッフワークに至り、観客に及んで、演劇は「可能性」のシロモノだ。なぜなら、演劇は、いつ始まり、いつ終わるとも知れず、何がため存在するのかもさだかでなはなく、なのに(あるいは、ゆえに)、私たちは、その可能性に魅せられて、過剰なエロスとタナトスの衝動を、何かに向けて(外部にせよ、世界にせよ、自己にせよ)発せずにはいられない。
    -----------------------------------------

     「オダサク、わが友」の脚本に書かれている北村想氏の一文だ。まさにこの芝居はイリュージョンだった。時間軸と空間時間を少し歪めながら、変幻自在に織田作之助の世界が繰り広げられた。それは織田作之助の作品の中の世界であったり、デビュー前の田中絹代が何故か自由軒で女給をしていたり、その時に関東大震災を匂わす台詞があったり、坂口安吾と太宰治との三人の座談会で織田作之助の浮気相手のバーのマダムの話が出たと思ったら、そのマダムの口から東京で観た「青い鳥」の話になり、いきなり「青い鳥」が始まったりする。所々で手渡されていく「飴」はまさに大阪の「飴ちゃん」だと感じさせてくれる。演出もイリュージョンのように鮮やかで連続性がありそして余韻が感じられるものだった。僕自身が織田作之助の作品を読んでいたらもっと楽しめたことだろうと思うのが少し残念だ。

     織田作の女房一枝が素晴らしかった。初め出てきた時は、緊張して声が震えて出ていないのかと思うくらい下手くそに感じたのだが、それは完全に役に入り込んでいたからだというのが分かった時は、鳥肌がたってしまった。全然演じていることを感じさせないのである。本当に病気じゃないのかなと思うくらい、その立ち姿だけでそれが伝わってくるのだ。織田作を心から愛しているのが痛いほどわかった。速水佳苗さんは、素晴らしい女優だと思った。

     脚本の最後に、織田作はヒロポン中毒であったが、あえてそれは描写はしていないが「表現はされている信じている」とが書かれていた。確かに織田作自身のタナトスは描かれてはいなかった。「夢のような大阪、大阪のロマン、ロマンは生活の中にこそある」と彼に語らせていて、坂口安吾や太宰治よりもどれほどエロスに溢れていることか。しかし彼が生きた時代は生活の中にロマンなど求めることができただろうか。彼の妻も終戦の一年前に他界しているぐらいである。ヒロポンに手を出してもおかしくはなかっただろう。

     「オダサク、わが友」を通じて「大阪のロマン」を僕は感じることができた。素晴しい本であり演出であったように思う。なのにカーテンコールがなかったのが残念だった。ああ一人でも拍手を続ければ良かった…。


    コメント
    コメントする








       

    calendar
    S M T W T F S
          1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    30      
    << April 2017 >>
            
    selected entries
    categories
    archives
    recent comment
    読んでミー。
    Booklog
    links
    profile
             profilephoto
    search this site.
    others
    mobile
    qrcode
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    神聖喜劇 (第1巻)
    神聖喜劇 (第1巻) (JUGEMレビュー »)
    大西 巨人,のぞゑ のぶひさ,岩田 和博
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    おせっかい教育論
    おせっかい教育論 (JUGEMレビュー »)
    鷲田清一,内田樹,釈徹宗,平松邦夫
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend
    recommend