今、五郎の生き方

    2011.08.20 Saturday
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     昨年、TVと舞台の両方で倉本聰さんの「歸國」を観た時に、それまでの倉本聰ではない何か嫌なものを感じて落胆したのだったけれど、さきほどBSフジの『北の国から』放映30周年記念特別番組『今、五郎の生き方 〜2011夏 倉本 聰〜』というドキュメンタリーを観て、再び「北の国から」の時の倉本聰さんに戻っているような気がして嬉しくなった。

     倉本の中にはまだ五郎は生き続けていて、今の五郎の家族を語ってくれた。蛍の旦那の正吉はいわき市で津波に流されて亡くなったそうだ。蛍は看護婦だから旦那を無くした悲しみを抱えながら被災地でボランティアをしているという。純は埼玉に住んでいたが、正吉が亡くなったことがショックで彼も東北に出かけて瓦礫を撤去するボランティアをしているそうだ。で、五郎は蛍の息子と二人で富良野で相変わらず自足自給の生活をしている。でも彼は税金も払っていないし年金も積み立てていなかったから、役所にとっては厄介な存在になっている。役所の人間が尋ねてきたら逃げまわるそうだ。彼は自分には生活保護も何ももらう資格ないと思っていて、ほとんどお金を使うような生活はしていない。物を作っては物々交換などをしているそうだ。今の「北の国から」を観たいと思った。倉本さん、書いてください。

     戦後の日本はブレーキとバックギアのない車と同じだったと倉本さんは言う。前へ進むことしかできない高速道路をずっと走ってきたのだと。「浪費が善だ」とする消費至上主義に対する批判をこめて倉本さんは富良野塾をやってきたわけだけど、3.11で「やはり来たか」と思ったそうだ。

     彼は、不便だけど昔の生活にもどって原発のない暮らしと、便利だけど原発の恐怖を感じながら生活する暮らしと、どっちを選びますかと、講演で聞いてみるそうだ。年配の人たちは原発のない暮らしを選びたいという人がほとんどだが、若い人達はその反対だという。不便な生活を想像することができないから、そちらの恐怖を感じるのだと若い劇団員は言っていた。

     その点、倉本聰さんならもっと想像力を働かせて欲しかったと思う。原発は今生きている人たちだけの問題ではないということを。そこまで講演会で話をしてくれると、若い世代でも原発のない暮らしを選んだと思うのだが。

     倉本さんのインタビューの合間合間に「北の国から」の有名なシーンが少しずつ流れた。純と蛍が、ボロボロになって捨てられた運動靴を、ゴミ置き場の中を探している。その靴は母親が買ってくれたもので、大事に大事に履いてきたものだったが、母親の葬式の時、その再婚予定のおじさんが、ボロボロの靴を見かねて新しい靴を買ってくれたのだった。おじさんが捨てる時も嫌だとは言えず、夜になって二人でゴミ置き場に探しにきたのだった。でも、そこへ警官がやってきて問い詰められる。純はシドロモドロになりながら答えるのだが、母さんは四日前に死にましたと言った途端、警官は急に態度が変わり一緒に探し始める。二人は呆然とたったまま涙を流す。そんなシーンだ。ほんの一分ほどのシーンだけど、また泣いてしまった(笑)

     富良野塾は昨年閉鎖されて、塾生たちが作ってきた建物も自然に返すということらしい。その場所に富良野塾の起草文が刻まれた石碑がある。


    あなたは文明に麻痺していませんか?
    石油と水はどっちが大事ですか?
    車と足はどっちが大事ですか?
    知識と智恵はどっちが大事ですか?
    批評と創造はどっちが大事ですか?
    理屈と行動はどっちが大事ですか?
    あなたは感動を忘れていませんか?
    あなたは結局
    何のかのと云いながら
    わが世の春を謳歌していませんか?

              聰



     倉本さんの脚本を書くエネルギーの元は「怒り」だそう。僕も「怒り」続けたいと思う。
    今だからこそ、倉本さんに「北の国から」を再び書いて欲しいと切に思う。




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