観劇戯言『チャンソ』May

    2012.02.19 Sunday
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      何気にBSを見ていたら、あるチャンネルに目が止まった。ナイロビのスラムの再開発についてのドキュメンタリーだった。スラムを高級住宅街などにするらしい。その事業の入札は中国とインドが競い合っていて、取材した場所ではインド人が工事を仕切っていた。しかも武器を所持した警察に見守れながらだ。市長はスラムに住んでいる人たちのことなど眼中にない。掘建て小屋のような家々をブルドーザーで壊し、有刺鉄線で土地を囲い込み、それに抵抗して石を投げる人々に警察は発砲する。市長は言う。街を欧米諸国や中国のようにしたい。そこに住んでいる人たちは私には関係ない。何処へでも行けばいいと。
     すべては自分のために、何一つ他人には与えないというのが支配者の常であるとかつてアダム・スミスは言った。こうして世界は富めるものはさらに富み、貧するものはさらに貧していく。そして居場所を奪われていくのだ。しかし世界はそう単純ではなく、支配と被支配が幾層にも重ねられ、自分の位置が確認しずらくさせられている。

     かつて大日本帝国もアジア一円を我が物にしようと非人道的な行為を積み重ねてきた。そして戦後もその関係を国家としてではなく人として修復できたとは思えない。奪われた人たちはその傷跡から涙を流し続けている。そんな異郷の人たちが日本にいる。





     今日、劇団Mayの「チャンソ」を観てきた。大阪朝高に入学したチャンソがいろいろなものを背負いながら自分の居場所を探す物語である。

     「俺らは朝鮮人として生まれたんやない。朝鮮人を背負ったんや。俺らは朝鮮学校に入学したんやない。朝鮮学校を背負ったんや。」と本当は気の弱いチャンソが喧嘩の強い仲間に囲まれ、気負う。

     仲間たちは、日本人には容赦なく喧嘩を挑み、こてんぱんにやっつける。しかし、チャンソは虎の威を借りた吠え方なので、年下の日本人にも馬鹿にされる日々を送る。カン・グンソンは「お前のやり方は気持ち悪いんや。日本人は俺らの後ろの70万人を見よるんや。…あのな人間には向き不向きがあるんや。」と諭しながらも、仲間はチャンソを排除することはなかった。

     カン・グンソンは言う、「自分の負い目を血のせいにするな。もう喧嘩がだけが全てと違う。強さが形を変えるんや。ボクシングやラグビーにな。俺らはチョゴリを無くさんがために暴れとるんや。」

     やがてチャンソは「俺は何を恐れて、何に負けてたんやろ。」と自問自答をはじめる。そして片思いの彼女リュ・ソナに気持ちを伝えるのと同時に、かつて喧嘩に負けたことのある日本人に決闘を挑む。八戸ノ里駅ホーム停車時間120秒の闘いだ。その闘いにリュ・ソナが演奏するカヤグムが織り重なる。

     そんな彼らが朝鮮学校を卒業する時に、暴力ばかり振るっていた先生が言う。「卒業してもいつでも覗きにくればいい。俺はこの場所を死守しているから。」と。チャンソとは主人公の名前であり、「場所」という意味でもあるのだ。物理的な意味合いでの場所は、今現在でも追いやられているのが現実だろう。ネットウヨの類が現れ始めてから、殺伐としたもの感じる。しかし、この芝居からは心の拠り所である「場所」の居心地良さを羨ましく感じたのも正直な思いである。


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